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いのちのバトンを
つなぐ未来
ーフタユビナマケモノの赤ちゃんの誕生・成長ー
2024年8月28日未明——
小さないのちがこの世界に誕生しました。
それは、アドベンチャーワールドで初めて生まれたフタユビナマケモノの赤ちゃん。
しかし、その道のりは決して平坦なものではありませんでした。
Episode 1 赤ちゃんの誕生
「この腕の中で、大切に守っていく」
フタユビナマケモノの展示場で、ひっそりと新しいいのちが生まれました。
母親が優しく抱きしめる姿——それは、いのちのぬくもり。
しかし、誕生の瞬間を誰も目撃しておらず、スタッフがその存在を知ったのは朝になってからでした。

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いつかは赤ちゃんが誕生することを期待して同居していましたが、妊娠していることを把握していなかったので、朝来てびっくり!赤ちゃん誕生に大喜び!!
3年前にメスをのいち動物公園から受け入れ、やっと念願が叶いました。
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耳を澄ますと「チュウチュウ」と乳を吸う音がして一安心でした。
(飼育スタッフ)
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Episode 2 母親との別れ
「母から子へ、受け継がれるもの」
出産後、母子ともに落ち着いた様子で授乳行動も確認されました。しかし、順調に見えた親子の時間は、あまりに儚いものでした。
8月29日早朝、母親の体調に異変が。
飼育スタッフと動物病院スタッフが懸命なケアを施しましたが、その願いは届かず……。
母親は静かに息を引き取りました。
母親のぬくもりを失った小さな赤ちゃん。
しかし、いのちはそこで止まりませんでした。
スタッフの手によって人工保育が始まり、新たな挑戦の日々が始まったのです。
朝来ると、普段なら木の上にいる母親が地面に近い下の方の枝に掴まっていて、これはおかしいと焦りました。幸いにも赤ちゃんは母親にしっかり掴まり続けていました。
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夕方になっても母親の容態は良くならず、どうすることもできない絶望感とこれまでの元気だったことを思い出して虚無感に襲われました。ただ目の前の赤ちゃんは元気で、その生きる力を繋げなければ、というただただ使命感だけでした。
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出産は命懸けだと改めて思い知らされました。母親のためにも、絶対にこの子だけは生きながらえさせなければいけないと思いました。そのために、私たちは努力を惜しまずに人工保育を達成させなければならないという気持ちでした。
(飼育スタッフ)
Episode 3 試行錯誤の人工保育
「ゆっくりでも、確かに進む道」
すべてが手探りの中で始まった人工保育。
赤ちゃんの成長に一喜一憂しながら、スタッフは昼夜を問わず向き合いました。
「生きてほしい」—— その一心で。
やがて、体は少しずつ大きくなり、力強くミルクを飲み、木をしっかりと握る姿も見られるように。
そんな赤ちゃんの姿に、スタッフたちは何度も勇気をもらいました。
いまではその姿をゲストの皆様にもご覧いただき、この成長の物語を見守っていただいています。

他の飼育施設に急ぎで情報を求めたり、人工保育のハンドブックを読み漁ったりしました。ミルクの種類、回数、飲ませる体勢、哺乳瓶の乳首の大きさ、離乳食を始めるタイミング・種類、すべてが初めてのことでしたが、赤ちゃんが生きるために「私たちがやらないで 誰がするんだ」という気持ちで何度もミーティングを重ねながら試行錯誤しました。
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ミルクをいつもより飲まないと不安になったり、温度、湿度管理が大切な動物なので、その調整がうまくいかなかったりすると焦り、チームメンバーと相談しながら、環境を整えました。
自然保育と比較すると、赤ちゃんに好きな時間に授乳させてあげられないこと、母乳を与えられないこと、温かい母親のお腹に乗って過ごさせてあげられないことなど、できないことはたくさんあります。その中でいかに工夫して自然保育に近づけるかを考えてきました。
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「命を繋ぐ」ということは言葉では簡単に言えますが、本気で取り組んでいても難しいことだと感じています。飼育されている動物は限られた環境にいますが、その中でできるだけ本来の生活が送れるように努めることが私たちの使命ですし、それをフタユビナマケモノの赤ちゃんから感じ取ってもらえたら嬉しいです。
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無事に大人たちに仲間入りし、3頭で過ごす姿をゲストの皆様にも見ていただきたい。今後もゆっくりのんびり育つ赤ちゃんを見守っていただければ嬉しいです。